Laba diena !
リトアニアと合唱好きをつなぐブログ Lithuarythm〜リトアリズム。
今回はリトアニアの民謡についてのご紹介いたします。
リトアニアをはじめ、エストニア、ラトヴィアといったバルト三国は合唱大国、またこれらの国の人々のことを歌う民族など合唱や歌についての通称がいくつかあります。
それだけ歌や合唱というものがそれぞれに国において特別で大切なものであることが言えると思います。1980年〜1900年代前半にかけておこなわれた独立運動のなかで民族独自の文化を残すため、また広く認知させるためにリトアニアの詩人や音楽家は、村々の民謡を調査し、民謡集として取りまとめました。
リトアニアは元来、農業社会であり、農民たちが歌いつないできたたくさんの歌が存在します。主に農耕に関わる労働歌謡がたくさんあることが特徴的です。その他自然について歌った歌や結婚歌謡、恋愛歌謡など様々な民謡曲がありますが、こうした民謡からリトアニアで暮らす人々の生活が見えてくるようです。
今回は、リトアニアの民謡から一曲ご紹介します。
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Auga keime dagilelis
Auga keime dagilelis /
Keime keimelie tėtušio dvarelie /
Mirė mano motinelė, mirė mano sengalvelė /
Palikau veina, veina siratelė /
Aš nueisiu ont kapelių /
Verksiu kukousiu gegutės balseliu /
Kelkis, kelkis motineli, kelkis kelkis sengalveli /
Nuramink širdelį vargšei siratelei /
以下筆者訳
裏庭にアザミの花が咲く
裏庭にアザミの花が咲く/
親愛なる父の土地にある小さな裏庭/
私の愛する母は死にゆき、私の親愛なる過去の人もまたそう/
私は、たった一人残される、私は寂しい孤独な子どものよう/
私は、眠る場所(墓)へ行く/
私は、かっこう鳥の声でむせび泣く/
目覚めて、親愛なる母よ。立って、私の過去の人たち/
哀れな悲しみの心を鎮めください
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この歌詞ででてくるカッコウ鳥とは、リトアニアにおいて女性のシンボルとして使われます。おそらくこの歌の私とは女性であると考えられます。一見、とある村娘が亡くなった家族や親族などを想う哀歌のように読み取れますが、この歌の内容には、別の意味も含まれていると筆者は考えます。
“父”は祖国リトアニアのことを表し、“過去の人”というのは、このリトアニアを築き上げてきた過去の英雄たちを称えていると考えられます。“母”は様々な意味でとらえられることがありますが、偉大なる母、守り神と考えると強い権力に常に脅かされてきた祖国リトアニアを思うリトアニア人の姿が浮かび上がってくるようです。裏庭に咲くアザミの花は、まさにリトアニアの文化や儚くもたくましく生きるリトアニアの人々を象徴とするものではないでしょうか。
こうした民謡曲は、口頭で伝えられていくことが一般的で地域によって、アレンジが異なることが多々あります。また時間と共に消えていってしまうこともあり、運動の一貫とはいえ一度本として出版されたことは、民謡を後世に伝える大きな役割を果たしたと思います。
今回ご紹介した民謡は哀歌でありますが、悲しい歌ばかりではなく、収穫を祝うものや婚礼の祝うものなど楽しい歌もあります。これから少しずつ紹介していきますので、お楽しみに。